• たかが石・・・されど石・・・

こんにちは。
木村石材の木村 希です。
実はこの度、NHKの番組に出演いたしました。
ここ数回の緑泥片岩の
秩父青石の件ですがこれが答えです。

事の発端は思い出すと
昨年の夏に、所沢市の生涯学習センターでの
講演依頼を受けた時です
↓講演の件はこちらから
生涯学習センターで講演

その時に話のネタ用にと、見にいった野上下郷石塔婆でした。
こちらから↓
日本一の石塔婆

ちょうどその頃、NHKの歴史番組で
俳優の佐藤二朗さんがMCの「歴史探偵」という番組が
「戦国の忍び」をテーマに取り上げて
その中でこの板碑を加工して武器にしたのではという事で、
この石製手裏剣を実際に作るという事になったそうです。

元々、このテーマの企画展を行ったのが
今回の番組にも監修として関わっていて
このブログでも何回も登場(?)していました
埼玉県立嵐山史跡の博物館の学芸員の方でした。
(今は長瀞に移動なさったようですが)
この方が僕の石塔婆のブログ記事を見つけ
NHKに紹介したそうです。

昨年の11月頃でしょうか?
毎朝、仕事前にメールチェックをするのですが
「ん?なんだ?」となりました。
差出人はNHK大阪から。

そう!「歴史探偵」のディレクターさんからでした。
メールの内容を読んでみて・・・
自分が好きで見ていた番組スタッフからのメールです。
「まじか!」と思いながらも心の中では

「なんか面白そうだな(ニヤニヤ)」

以前、市政70周年記念で携わった
トトロのオブジェの時と同じ感じがしました。

電話で直接お話ししてとりあえず引き受けることに。
ただ、板碑に使われた秩父青石は天然記念物に指定されていて
もう採取できませんので
どうしますか?って言ってたら
NHK側が色々探して同じ片岩である
徳島県産の阿波青石の飛石を手配して送ってくれました。
扱った事のない緑泥片岩でしたので非常に苦戦しました。

石製手裏剣ですので、まずは薄く割るのですが
この阿波青石が思ったより「変成」が強く綺麗に剥がれず
途中で割れてしまいます。
結果的に現在の合金(タンガロイ)がついているノミより
鉄製のノミの方が上手く剥がれる所まで辿り着きました。
片岩は花崗岩や安山岩に比べると柔らかいというか
崩れやすく脆いので、切れ味が「鋭い」といわゆる
石に「食ってしまう」感じになってしまいました。

なんとか薄く剥がして今度は5センチ程度の六角形に加工します。
厚みも1センチ程度となっていましたので割らずに薄くするのが難関でした。
機械等は一切使わずにとの指示でしたのでいくつか作ってみました。
左上が一番上手くいった型でした。

大小いくつか作ってみました。
この段階でも学芸員さんと電話で相談しながら色々な方法で作ってみます。
これが昨年末の事です。
てっきり作るだけと思っていたら、年末にディレクターさんが当社までお越しいただき
話していると・・・何やら話が変な方向へ。

「えっ?俺も出るんですか?」

そう!。制作風景をロケすることになりました。
というか最初からその予定で、自分が聞いていなかっただけでした。
イヤと言いかけたのですが、スケジュールも放送内容も決まって
ここでグズっても・・ねぇ・・・汗。

年が明けた1月の非常に寒い日でした。
前のロケが押してしまっていたらしく
スタッフの方達が来た頃はもう完全な夜。
工場の中も寒いのでストーブ2箇所で炊いて温めますが
前日、雪が舞うくらいだったので底冷えします。

段取り、カメラアングル、照明等を調整します。
結構、画角とか細かい調整をするんですね。

人生で初めて、音声さんにピンマイク付けてもらっています。
非常に緊張してきました。

ロケスタートです。

いくつかのシーンに分けていろんな角度やらと数パターン撮って
1時間以上撮影したでしょうか?
テレビを作るのって大変なんですね。
特に照明さんの技術というか半端じゃなく
感動すら覚えました。
インサート用に石を写す時に微妙な影を作って
素晴らしい立体感を出す!
ホントに同じ石?って思うほど。
なんとか無事にロケも終わったので
最後にお願いして
今回の探偵役である近田アナと記念撮影!
鉄道大好き!猫大好きの非常に優しい笑顔が似合う方でした。

ここから約2ヶ月近く経った3月末頃に
放送日が決まりましたとの連絡が来ました。
僕の肩書き部分「石材施工職人」でいいですか?との
問い合わせでしたので
「できれば1級石材施工技能士にしてもらえませんか?」
とお願いしました。

というのも現在、全国石材技能士会という団体で
事務局を仰せ使っているのですが
上部団体の(社)全国技能士会連合会などでも
この「技能士」というものが世間で認知度が低いと
よく話題になっています。
せっかくの全国放送ですのでそこに「技能士」という
言葉を入れてもらえれば他職種を含めて
本来の「職人」の地位向上に少しでも役に立てばと思い
お願いしたところ快諾いただけました。
ついでになんですが、嵐山史跡の博物館に歴史探偵の
ポスターが貼ってあったのでお願いしたところ
頂いちゃいました(ニコニコ)
事務所に貼らさしていただきました。

いざ放送日を迎えました。
ロケの時にあんなに時間かけて撮った
石のインサート画像が使われていなかったのは
残念ですが、番組の尺を考えてディレクターさんも
悩みながら編集したんだろうなぁと思ってしまいました。

色々なところから「みたよ!」と言われたのですが
一番驚いたのが、翌日にわざわざ所沢市長さんが尋ねてきました。
トトロの除幕式や、神社の大祭等で何度か面識はあったのですが
偶然、ご覧になったらしく
次回からテレビに出る時は、
市の観光産業課に連絡してほしいとの事でした。
字幕で「埼玉 所沢」と映ってましたし
市のPRになるからって・・・
恐ろしいですね。NHKの影響力というのは!

今回は普段扱っている花崗岩や安山岩ではなく変成岩である
緑泥片岩と言われる特殊なものでしたが
いにしえの石工たちがこの石を使って板碑を作っていたと考えると
少しその感覚を味わえたのかな?と思っています。

振り返ると長かったですが
非常に石工として楽しかった半年間でした。
ちなみにショート版がYouTubeのNHK公式サイトで
来年3月まで配信されるそうです。
宜しかったらご覧ください。

NHK公式 歴史探偵